削りかす

なにもかにも嫌なのに、なにもかにもを手放せないので有象無象から抜け出すことはできません。有象無象です。私は何者でもないので無です。

すべて嫌になったら、すべてに火をつけて燃やして回ってやろうと思っていたんですけど、有象無象であることを理由に私がそのような逸脱した人間になることはないでしょう。自他の仕切りはしっかりとしておきたい人間です。でもなんだか、普通とか常識とかいった言葉とは相性の悪い性格らしく、つらいと感じることばっかりで嫌になってしまいます。

どうしてなんでしょう、私とあなたは違うのに、違うから器が二つに別たれているのに、どうして共通項を探してしまうんでしょう。

これもきっと私の悪癖の一つなんでしょう。

それでも今、つらいと思っているのはここにいる私なので、今の私にはどこかで誰かが血を流していようが、誰かと幸せを分け合っていようが、一人寂しく布団にくるまっていようが、全く預り知らないことです。私のつらさを、誰でもいいので爪先ほどでもわかってほしいのです。頭を撫でてほしいのです。背中を擦って優しい言葉をかけてほしいのです。私が真にほしいのはそれらです。どうかお慈悲を、それで有象無象の某かが救われます。

私は夜を越えて、どこにでもいる誰でもない私から、ここにしかいない誰かのための私になりたいのです。有象無象の石ころの一つからあなたの特別な石ころになりたいのです。

過ぎた望みでしょうか、有象無象には過ぎた望みでしょうか?

 

そんなこと、誰が私に言えるでしょうか。あなたも私もたかが石ころにすぎないのに。叫ぼうと拾い上げて聴いてくれるような、誰もが渇望する特別な誰かはきっとどこにもいないというのに。