怖い話

「死ぬ勇気がないから生きている」というのは最近よく聞く言説だが、本当にそんなに後ろ向きな生き方でいいんだろうか。かく言う私もどちらかと言えば死ななければならない理由がないので生きているに過ぎないのだが、死なない為の理由はいくらでも思い付くのに死ななければならない理由は思い付かない。

私は他の人間に類を見ないほど独善的なので、たとえ人類を死に至らしめる感染症の元締めで私が死ねば人類が救われるとしても自ら死を選ぶようなことはしないだろう。死ななければならない理由ってなんだろう、恋をすればわかるのかもしれないな。人を愛するのも人に恋するのも一人ではできないことなので、相手を募集したいな。自殺志願者でも募るような気持ちで。

私、一人で死にたくないんだよな。心中したいわけではないんだけどね。死なない為の理由なんて死にたくないからで事足りるな。死ぬことへの感情は恐怖しかない。怖すぎるだろう。小学生になったときと同じ類いの恐怖。先がわからない恐怖、どうしようもなく強大なものへの恐怖、自分がどうなるかわからないという恐怖。わからないということは恐怖そのもので、急に暗幕をかけられたように前後がわからなくなってしまう。

私は死という誰にでもいつか訪れるソレに怯えながら生きているに過ぎないんだよな。延命なんて無意味だ、もしかしたら今この瞬間に隕石が落ちてこないとも限らないし。どれだけ生きていたい理由があっても強大な力には抗えないんだな。悲しいな。死は永遠の恐怖なんだ。生物が忌避してやまない根源的な恐怖。その恐怖を和らげるために神が造られた、ただそれだけ、それだけのことだ。

明日もちゃんと目覚めることを祈りながら眠ります、おやすみなさい。